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大島康裕(教授) 分子研リポート2005 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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研究系及び研究施設の現状 143

大 島 康 裕(教授) (2004 年 9 月 1 日着任)

A -1)専門領域:分子分光学、化学反応動力学

A -2)研究課題:

a) 大振幅な構造変形運動に関する量子波束の生成と観測 b)非断熱相互作用による量子固有状態分布移動の実現 c) 気相芳香族クラスターにおける分子間相互作用の精密決定

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) さまざまなタイプの分子について運動量子波束の追跡が行えるような,高い適応性を持ったフェムト秒実時間分光 法の開発を進めている。特に,ねじれ振動のように大規模な構造変形へとつながる運動の量子波束観測に重点を置 いている。昨年度において,相対位相をランダムに変調した同一波長パルス対を用いる干渉計測法(C OIN ;C oherence Observation by Interference Noise)により,o-フルオロトルエンのS1–S0遷移におけるメチル基内部回転量子波束の観 測に成功している。本年度は,より高強度のパルス対を用いることにより,非線形コヒーレント光学過程の1種であ る T R F D( T ime-R esolved F luorescence D epletion)による内部回転量子波束の観測に成功した。C OIN と T R F D による 結果を対照することにより,電子遷移の振電準位構造を特定できることを示した。o-フルオロトルエンでは,T R F D によって電子励起状態における内部回転量子波束が観測されたが,さらにm- クレゾールを対象とした測定を行う ことにより,電子基底状態における量子波束の観測にも成功した。これらの結果により,一般の多原子分子において も,基底状態→励起状態→基底状態という経路にわたって,数%以上の効率でコヒーレントな分布移動が実現でき ることを実証した。

b)本年度より,高強度な極短パルス電場と分子とのインパルシブな相互作用によって量子固有状態分布を非断熱的に 移動する手法の開発を開始した。具体的には,ジェット冷却により初期分布を制限した分子集団に,再生増幅フェム ト秒チタンサファイアレーザーの基本波出力により非共鳴的に相互作用を加え,その後,ナノ秒レーザー光による 共鳴多光子イオン化によって固有状態分布測定を行う。このためのT OF 質量分析用真空チャンバーを新たに作成し た。さらに,最も簡単な系である2原子分子の1例として NO を取り上げ,回転温度~2 K の Boltzman分布で表され るスペクトルが,フェムト秒レーザーの照射によって有意に変化することを実証した。また,非断熱的な分布移動に 関するモデル計算コードの開発も行った。

c) 芳香環の関与する分子間相互作用ポテンシャルを精密に研究する目的で,T OF 質量選別法と組み合わせたレーザー 分光によってベンゼンクラスターの電子遷移の観測を行っている。本年度は,π水素結合を有する典型的な系であ るベンゼン−水の1:1クラスターについて重点的に研究を行なった。2重共鳴レーザー分光の一種であるホールバー ニング法を適用することにより,小さな遷移強度しか持たない分子間モード励起バンドを高感度で検出することに 成功した。水に関する3つの同位体種について測定を行い,観測された系統的なバンドシフトから振動モードの帰 属を行った。特に,40 cm–1以下という低波数領域に,特徴的な同位体シフトを示す極めて微弱な遷移が存在するこ とを見出した。これらは水分子の3次元的な内部回転運動に対応した振動バンドであり,既に報告されている6次 元動力学計算と比較すると,極めて大きく低波数側にずれている。この結果は,計算で用いられたモデルポテンシャ ルの形状に問題があり,実際はより異方性の低いポテンシャルであることを示すものである。また,HD O のクラス

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144 研究系及び研究施設の現状

ターでは,H2O や D2O では禁制なバンドが明瞭に観測されるようになることから,非対称的な同位体置換によって 分子間ポテンシャル自体が歪むことが明らかになった。

B -1) 学術論文

Y. OHSHIMA, K. SATO, Y. SUMIYOSHI and Y. ENDO, “Rotational Spectrum and Hydrogen Bonding of the H2O–HO Radical Complex,” J. Am. Chem. Soc. 127, 1108–1109 (2005).

B -3) 総説、著書

大島康裕 , 「レーザー誘起蛍光と関連技術」, 第5版実験化学講座9「物質の構造 I 分光 上」, 日本化学会編 , 丸善 , 4.4 章(2005).

B -6) 受賞、表彰

大島康裕 , 分子科学研究奨励森野基金 (1994).

B -7) 学会および社会的活動 学協会役員、委員

日本分光学会装置部会企画委員 (1995-1999). 日本化学会近畿支部幹事 (2001-2003). 日本化学会東海支部幹事 (2005- ). 分子科学研究会委員 (2004- ).

分子構造総合討論会運営委員 (2004- ). 学会の組織委員

The East Asian Workshop on Chemical Reactions, Local Executive Committee (1999).

分子構造総合討論会実行委員 (2002-2003). 化学反応討論会実行委員 (2005-2006). 学会誌編集委員

日本化学会誌(化学と工業化学) 編集委員 (2001-2002).

B -10)外部獲得資金

一般研究(C ), 「ラジカル反応対における分子間相互作用」, 大島康裕 (1995年).

一般研究(B ), 「溶媒和クラスター内エネルギー散逸過程の実時間領域測定」, 大島康裕 (1996年 -1997年). 三菱油化化学研究奨励基金 , 「分子配置の量子波束制御と化学反応コントロール」, 大島康裕 (1998年). 基盤研究(B ), 「微視的溶媒和による無輻射過程の制御機構の解明」, 大島康裕 (1998年 -2000年). 日本証券奨学財団研究調査助成 , 「1重項酸素生成機構の分子論的解明」, 大島康裕 (2000年 -2001年). 旭硝子財団研究助成 , 「1重項酸素生成機構の分子論的解明」, 大島康裕 (2000年 -2001年).

日本原子力研究所黎明研究 , 「気体分子の配向完全制御と動的構造決定への応用」, 大島康裕 (2002年). 住友財団基礎科学研究助成 , 「気体分子の配向完全制御と動的構造決定への応用」, 大島康裕 (2002年).

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研究系及び研究施設の現状 145 基盤研究(B ), 「孤立少数自由度系における構造相転移の実験的探索」, 大島康裕 (2002年 -2004年).

光科学技術振興財団研究助成 , 「コヒーレント光による分子運動の量子操作」, 大島康裕 (2003年 -2004年).

特定領域研究(強光子場分子制御)(公募), 「強光子場による分子配列・変形の分光学的キャラクタリゼーション」, 大島康 裕 (2003年 -2005年).

C ) 研究活動の課題と展望

極短パルス光を用いるa) ,b)の研究は順調に進捗しだしたところであり,光パルスのパラメーターの最適化,さらに,波形整 形技術の導入によって,目的とする運動状態のさらなる効率的な生成を追求したい。その上で,特定の運動状態から(光解 離・異性化などの)化学反応を進行させる研究へと発展させる。c)に関しては,実験データを再現するモデルポテンシャルの 構築が急務であり,国内外の理論研究者との共同研究の道を探りたい。また,電子基底状態における分子間振動準位構造 についても幅広いエネルギー領域で高精度のデータを得るために,高分解能非線形コヒーレント分光を適用する予定であ る。そのために,現在着手しているフーリエ限界ナノ秒パルス光源の開発を至急進める。

参照

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